転倒、転落、衝突などスポーツや交通事故で頭を打ったとき、よく「たんこぶができたら大丈夫」と言う人がいますが、 これはまったく根拠がありません。 われわれ専門医は「たんこぶができるほど頭に強い衝撃をうけた」と考えます。当然、頭蓋骨骨折や頭蓋内出血が起こっている可能性もあります。
走って自分で転倒した程度で、頭皮にあきらかな外傷がなく元気である場合はそのまま様子をみてください。そして翌日も元気であればまず受診の必要はありません。受傷後元気がない・頭部の目立つ腫張・出血がみられる場合は医療機関を受診された方が無難です。
よくある質問:何科を受診すればよいのかが分かりません。(脳神経外科?整形外科?形成外科?)
整形外科でも外傷を診ますが、頭部顔面外傷は脳神経外科の方がよいでしょう。昔ながらの単純レントゲンは情報量が少なく医学的にあまり意味がなくなりました。頭部外傷で十分な情報がえられる検査はCTしかありません。放射線を使わないMRIを希望されることがありますが、MRIは頭蓋骨骨折を診断しにくいという欠点があり、さらに機器の中で10分以上安静にしないと撮れませんので10歳以下の子供では麻酔をかけないと検査は不可能です。頭と手足など複数の部位の受傷は頭の方を優先してください。
乳幼児では、抱いていて落とした、目を離した隙にテーブルや椅子から落ちた、乳母車から転落したなどの家庭内の事故が目立ちます。 2歳未満の子供の場合は骨の厚さが数ミリしかありませんので、たんこぶ程度でも頭の骨折が見つかることがあります。
受傷後ボーっとしている、食欲がなく気分が悪い、吐き気があるなどの症状は脳震盪という状態で、 適切な治療と安静が必要です。少しでも気になる症状があれば、脳外科専門医の診察を受けるべきです。
注意が必要な怪我
左のような場合は思いもかけない力が頭にかかっていることがありますので、できるだけ専門医への受診が必要です。
特に交通事故は思いもよらない衝撃を受けていることがあります。 頭痛、嘔気などが続くときは軽微な外傷でも頭の中の損傷を考えなければなりません。 数日間何も症状がなかったり軽症であれば、数週間や数ヶ月たってから後遺症が出ることはまれですが、 高齢者では数週間たって頭の中に血が溜まって手足の麻痺が出ることがあります。
外傷による頭蓋内血腫
左は受傷時から発生する急性硬膜外血腫、右は受傷後日数を経て発生する高齢者に多い慢性硬膜下血腫
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